|
|
|
スポンサード リンク
世界一小さな国。ひとつの都市の中に小さな国がある。
このくらいの認識はたいていの方が持っていることでしょう。
そう、ヴァチカン市国です。
スペイン広場から西へ少し歩くと、
北から南に流れるテヴェレ川に出ました。
川沿いに南に下ると、対岸にひときわ目を
ひく大きな建築物が現れます。
手元の地図によると、手前の建物は最高裁判所、
そしてその向こうにあるスクリーンの中で見たような建物は、
「サン・タンジェロ城」。美しく壮大なお城です。

ヴァチカン サンピエトロ大聖堂
スポンサード リンク
「Castle Sant’Angelo」(聖なる天使の城)には、
ローマ帝国にペストが蔓延したときに教皇が場内で祈ると、
上空に大天使ミカエルが現れたという伝説があるそうです。
天使様に導かれるように、
城と同じ名前がついた橋を渡り、
川の右岸へ出ました。
城を右手に見ながら西を向くと、目的地が見えてきました。
ローマを旅するなら、ここは絶対に訪れようと同行者と
意見が一致して楽しみにしていたのです。
だんだんと近くなってくるサン・ピエトロ大聖堂からは、
何やらこれまでに感じたことのない
荘厳な気をひしひしと感じました。
正面に見える大聖堂に向かって
大勢の観光客の流れの中、歩みを進めました。
広大なサン・ピエトロ広場に到着したは良いのですが、
気の遠くなるような長蛇の列です。
その日の午後をヴァチカン市国観光に充てていましたが、
この果てしなく感じられるほどの行列に並ぶだけで、
午後が終わってしまいそうなのです。
観光客がヴァチカンの中で入ることができるのはサン・ピエトロ大聖堂、
サン・ピエトロ広場、ヴァチカン美術館周辺のみということでしたが、
その美術館でさえ、一日あっても回りきれないといわれるほどの規模です。
私たちは最初から、美術館のいくつかの目玉を
鑑賞してまわるというコースに絞っていました。
広場を埋め尽くすかのような観光客の行列は、
先頭がどこなのかすら見えず、
列が進んでいる気配もうかがうことができません。
とりあえず最後尾に並んでみたものの、
この行列が大聖堂に続いているのやら、
美術館へ続いているのやらさっぱりわからず不安を感じ、
同行者を行列に残して先へ走ってみました。
幸い、明らかに観光客ではない大聖堂のシスターと
思われる女性をすぐに見つけることができ、
この行列はどこに入る人の列かと尋ねてみました。
案の定、大聖堂への入場を待つ人の列だったのです。
キリスト教の復活祭直前ということもあり、
大聖堂で行われる特別な催しに、大勢の人が詰めかけたようでした。
シスターに教わった通り、広場を一旦北側に出てぐるりと
数分ほど迂回した先に、
広場のものほどは長くない行列の最後尾を見つけることができました。
思ったより行列はスムーズに進み、
意外とすんなり美術館に入ることができました。
ですが、問題はここからです。
私たちは自由行動でヴァチカン市国を訪れたので、
この広大な美術館のどこをどう見てまわると効率良く、
目玉の作品を鑑賞することができるのか、
頼りにできるのは手にしていた一冊のガイドブックだけでした。
時間にゆとりがあれば、イヤホンで日本語のガイドを聞きながら
ひとつひとつをゆっくり見て回っても面白かったでしょうが、
そんな余裕はありませんでした。
それぞれの作品の詳細をじっくり聞きながら
ひとつずつ鑑賞しようと思ったら、
一日や二日で見て回れるような美術館ではないのです。
純粋に、美術館の雰囲気と膨大な数の美術品の華麗さ、
緻密さを楽しみ、それらを描いたり
創造したりした芸術家たちの美を追求した心、
それらを集めた歴代のローマ教皇たちの美を愛でた心に
思いを馳せることにして、一番大きな人の流れにのって歩きました。
それまで日本の美術館しか訪れたことのなかった私には、
まずその館内の雰囲気が圧巻でした。
長く続く回廊で見上げた天井のきらびやかなこと。
壁に飾られた絵画やタペストリー。回廊に置かれた彫刻の数々。
上を見上げて進めば良いのか、
左右の壁を眺めながら歩けば良いのか、
本当に目がいくつあっても足りません。
今いるのは本当に美術館の中だろうかと錯覚してしまうほど、
長い時間を歩きました。歩いているうちに、
自分たちのいる集団の流れがシスティーナ礼拝堂へ
向かっているものだということが、
漏れ聞こえてくる英語の会話からわかりました。
長い回廊を歩き階段を上ったり下りたり、
陽のあたる中庭に出たりと、手元の館内図を見ていても、
既にどこをどう歩いたかわからないほどでしたが、
大勢の方が向かう流れに任せていたおかげで、
有名な壁画やフレスコ画の多いラファエロの間、
ミケランジェロの大作『最後の審判』が天井を覆うシスティーナ礼拝堂、
螺旋が美しいシモネッティの階段など、
ヴァチカン美術館の主要部分を見て回ることができました。
歴史的価値、美術的価値の高いこれだけの作品を
一堂に集めてあるというだけで、
震えるような感動を覚えます。
それらの美術品を生み出した過去の芸術家たちは、
数百年も後に、こうして自分の作品がこんなにも多くの
人の目を惹きつけるなんて想像できたのでしょうか。
鑑賞してくれる方がいなければ成り立たない芸術家。
美術品に明るくなくても、どんな思いでこれを描き、
彫ったのかと想像しながら眺め、見た作品から漠然と
何かを感じとるといった楽しみ方で良いと思いました。
ルネッサンス期の芸術やラファエロの作風といったうんちくが
まったくわからなくても、聖ヨハネや聖ペテロ、キリストなど、
描かれたり彫られたりしている神々を知らなくても、
普段美術鑑賞に縁がなくても、
この美術館は訪れてみるべきだと思います。
|